なぜ、今、女性マーケティングが注目されているのか?

男性と女性の人口比は、ほぼ半々。
なのに、日本のみならず、世界の購買決定権の8割は、女性が握っていると言われています。

「まさか!」と思われる方も、おそらくデパートの売り場面積を考えれば、納得がいくのではないでしょうか。
化粧品や服、エステやネイルサロンなど、女性向けの商品やサービスがひしめく中、多くの百貨店では「男性/紳士服売り場」は1フロアのみ。さらに、その男性の服飾雑貨すら、パートナーの女性たちが選択している場合もあるくらいです。

インターネット通販業界でも、メイン商材といわれる化粧品や健康食品の大半は、女性をターゲットにしており、女性向けの雑誌だって、まだまだ多様な展開で数多く刊行されています。その上、家庭内で、洗剤や食材など日常の細かな消耗品の銘柄を決めているのも、子供の身の回りの品の選定をしているのも女性の場合が多いとなると、そもそも女性が、購買の意思決定に関わる範囲はかなり広いのです。

また、家や車といった大きな買い物をする際にも、女性が「嫌だ!」と言ったら買いにくいという家も多いもの。つまり、女性たちは「拒否権」をも持っていると考えるなら、どんなビジネスにおいても、「女性の心をつかむ見せ方」ができるかどうかは、売上を大きく左右する可能性があることが、わかっていただけるのではないでしょうか。

さらに、女性の方が、より長生きで、アクティブな方が多いという点にも、注目すべきでしょう。

多くの女性たちは、仕事上の関係者だけと過ごしているわけではありません。
自治会の役員や子供の学校のPTAの集まり、送迎が必要となる子供の習い事のママ・コミュニティ、さらに、自分の習い事やボランティアなどにも複数所属し、それぞれの場所で積極的に情報交換をしながら過ごしています。つまり、良い噂も、悪い評判も、どんどん「口コミ」として拡散されていくのです。

たとえば、「あれ、試してみたけれど、全然ダメだから、買わないほうがいいわよ」というネガティブな情報から、「実は、半信半疑で使ってみたんだけれど、すっごくよかったから、絶対買ったほうがいいって。超オススメ」というポジティブな推薦まで、「実際に使った結果どうだったか」という個人的な感想が大量にやり取りされ、女性たちは、その身近な「口コミ」に大きな信頼をおいています。事実、通販を運営していると、時に「ある街」からの注文がやたらと多くなることがあるくらいに、実際上の影響力は計り知れないものがあるのです。

だからこそ、「女性マーケット」の攻略が、大きなビジネスチャンスと捉えられるのも、対策が急務だと考えられるのも、当然のことでしょう。

その上、実は「女性」だけの問題でもないのです。

今、世界のトレンドは「女性化」してきていると言われており、特に「ミレニアル世代」以降の若い人たちの価値観は、男女を問わず「従来の男性的な価値観」から離れ、どちらかというとこれまで「女性的」と言われてきた考え方に近づきつつあります。

つまり、今後は、これまで一般的であった男性的なマーケティングが通用しにくくなり、より女性向けのマーケティングに近い考え方で展開していく必要がある、とまで言われ始めているのです。また、女性たちに好まれる商品や販促物は、実は、誰にでもわかりやすく便利なユニバーサルデザイン的なものになる場合が多くなります。女性に特化した見せ方を意識することには、数え切れないメリットがあるのです。

まれに「ジェンダーフリーの時代に、今さら男女の性差を考える」ことの妥当性を疑問視される方がいらっしゃるのですが、改めて考えていただきたいのは、「恋愛」や「パートナーシップ」といった場面での男女差についてです。
もし、「恋愛コミュニケーション」じょジャンルにおいて、考え方や行動の傾向に一般的な違いがあることを肯定するならば、「顧客コミュニケーション」の場面、つまり購買時の考え方や行動にも、性別によって違った反応が見られるのは、当然のことでしょう(一人の人間が、ある一定の場面に限って違う反応をするとは考えにくいはずです)。

とはいえ、男女の差は相対的なものにすぎません。誰もが1人の中に「男性的な要素」と「女性的な要素」の両方をもっており、どちらがより強いかというバランスの問題なのですから、もちろんことさらに性差を強調する意図はありません。また、これまでのフェミニズム運動の歴史の中で、男女不平等な社会構造を変えるために、より「同じ」側面にフォーカスして権利を手にしていくより他なかった事情も理解できます。だからこそ、これまでビジネスの世界で、男女差に言及すること自体がタブー視されてきたのです。

けれど、権利としての「平等」を目指すことと、もともと存在する性差を無視して、すべて「同じ」という幻想にとらわれることとは次元が違う話であり、実際、女性向けの商材の販売促進に携わった人は、まったく反応が異なることを体感的に知っているものです(弊社代表の谷本の書籍は、特に、厳しく数字を計測しているマーケッターの方に人気があり、多くの女性たちに「これまでうまく説明できなかったものが言語化されて、スッキリした」と評価いただいています)。

それに、ほとんどの方は、男女でカップルで買い物に行ったら、お互いに購買行動の「当たり前」がかけ離れているために、ストレスを感じる経験をしています(たとえば、男性が目的の売り場に直行して目的のものをつかみ、即レジで会計を済ませて帰ろうとするのに対し、女性が「せっかくきたから」と寄り道を繰り返し、さらには目的地にたどり着く前に、運命の出会いから衝動買いをして満足し、目的を忘れて帰ってしまうのが典型的な違いです。ご自身に心当たりがない場合であっても、休日のスーパーのソファコーナーでは、男性がスマホを片手に女性が戻るのを待っている姿が見られることでしょう)。

にも関わらず、目の前に存在する違いを直視せず、あくまで「同じ人間だから、そう違わないだろう」という前提で、これまで通りの施策を続けるなら、多くの広告費が無駄になり、本来得られたはずの売上を逃す結果になるのは、当然のことでしょう。

ほとんどの女性は、広告の文章が、男性によって書かれたものかどうかを見分けることができます。どれだけつくろっても「何か違う」という違和感が残ってしまうことが多いからです。けれど、その微妙な「違和感」を、これまで女性たち自身も言語化することができませんでした。
そのため「何か違う」と感じていても、うまく感覚で伝えられない部分は諦めざるを得なかったり、個人的な好みの問題として片付けてきたのです。

また、まさかここまで根本的に違うとは、女性たち自身も気づいていなかったため、これまでの男性による男性のためのマーケティングやセールスライティングの理論を勉強するほど、女性であったとしても、知らず知らずのうちにズレていきがちにもなります。というのも、まさか「前提」が違っているなどと思わないので、誰も「前提」となる説明をしようとなどとはしてこなかったからです。

けれど、これまで「感覚に訴えるしかない」と言われ、「当たり外れが大きい」とか「再現性がない」と半ば諦められてきた女性の購買心理は、すべて理論的に説明できます。つまり、狙って当てることが可能です。

そして、これまで見落とされてきたから視点だからこそ、少し改善するだけでも、これまでにない劇的な違いを実感いただける全く新しいマーケティングのジャンルなのです。

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